居抜き物件チェックリスト
内見・契約の前に潰す

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居抜きは「前の設備がそのまま使える」のが魅力ですが、その裏で契約後に「使えない・直すのに数百万」退去時に「スケルトンに戻す義務で数百万」が起きやすい物件でもあります。ここは開業者と不動産・内装のプロが、居抜き/スケルトン物件を前に、設備と契約の両面を一つずつ潰すためのチェックリストです。

制度として用途変更(確認申請)が要るかは用途変更の実務判断、保健所の細かい基準は施設基準と地続きです(各所へリンクします)。

まず前テナントで難易度が決まる

同じ居抜きでも、前が飲食店だったか否かで、用途変更の要否・設備の流用可否・工事量が大きく変わります。最初にここを確認します。

前テナント効いてくること
飲食店だった用途変更は原則不要(同一用途)。厨房・グリストラップ・排気ダクト・給排水を流用できる可能性。ただし手洗い・シンク・区画は現行の施設基準(2021年に全国標準化)に適合が必要で、そのまま通るとは限らない。
飲食店以外(事務所・物販・住宅など)飲食店化=用途変更にあたり、変更部分が200㎡超なら確認申請(→用途変更の実務判断)。給排水・排気ダクト・電気ガス容量をゼロから引く覚悟が要る。工事費・工期が大きい。

契約前チェックリスト早見

最頻出のやり直し ここでつまずく人が特に多い項目

項目見るポイント目安・注意
前テナントの業種飲食店か、それ以外か飲食店以外→用途変更の要否を確認。
手洗いの水栓 最頻出回転ハンドル式か、レバー/センサー/自動式か調理場内の手洗いは再汚染防止構造が必須。回転ハンドルは不可=交換前提。
グリストラップ有無・容量・清掃状態多くの自治体で飲食店に設置を要求。無い/小さいと増設工事。
給排水給水・給湯の能力、排水勾配・経路勾配不足は詰まりの元。給湯能力が業態に足りるか。
電気容量契約容量(アンペア・kVA)、動力(三相200V)の有無飲食は大容量。増設は電力会社+工事でコスト大。
ガス都市ガス/LPガス、メーター号数中華・揚げ物など火力が要る業態は容量を確認。
排気ダクト・空調排気能力・経路、グリスフィルター、防火ダンパー、空調の能力・老朽度ビルは増設不可のことも。近隣への排気位置も。
区画・手洗い・シンク汚染/非汚染の区分、手洗いの位置、シンクの数区画は腰壁・エリア分けでも可。"2槽義務"は誤解(後述)。
造作譲渡 要確認譲渡対象リスト、所有権(貸主か前テナントか)「何が付いてくるか」を書面で。所有者不明の設備に注意。
リース残債 要確認厨房機器・製氷機・レジ等にリース契約が残っていないかリース品は譲渡・引き継ぎ不可。撤去されることも。
原状回復の範囲 最頻出退去時にスケルトンへ戻す義務があるか居抜きで入っても退去時に撤去費(数百万)になり得る。契約書で必ず確認。
検査済証あるか・図面が揃うか無いと増改築・大規模内装でつまずく(→用途変更の実務判断)。
用途変更の要否前が飲食店以外+変更部分200㎡超か該当なら確認申請(→用途変更の実務判断)。
消防用設備防火対象物の区分、自動火災報知設備・誘導灯等用途・規模が変わると遡及することがある。管轄消防へ。
保健所の事前相談その物件・図面で営業許可が下りるか着工前に図面を持って事前相談が安全。

① 設備を実測する(給排水・電気・ガス・排気)

回転ハンドルの水栓は最頻出のやり直し
調理場内の手洗いは、洗った手を再び汚さない再汚染防止構造(レバー式・センサー式・自動式など)である必要があります。居抜きに多い回転ハンドル式は不可で、交換前提になります。対象は調理場内の手洗いで、洗浄用シンクやトイレの水栓は対象外です。

給排水・グリストラップ

給水・給湯の能力(業態に足りるか)、排水の勾配と経路(勾配不足は詰まりの元)、そしてグリストラップ(油分を分ける阻集器)の有無・容量・清掃状態を見ます。飲食店の排水にはグリストラップの設置が多くの自治体で求められ、無い/小さい物件では増設工事が必要になります。

電気・ガス・ダクト・空調

飲食店は電気とガスを多く使います。既存の契約容量(アンペア・kVA)、厨房機器や大型空調に要る動力(三相200V)の有無、ガスは都市ガス/LPガスの別とメーター号数(火力の要る業態は特に)を確認します。排気ダクトは能力・経路・グリスフィルター・防火ダンパー、そして近隣への排気位置まで。ビルによっては容量の増設ができないことがあり、その場合は業態自体の見直しになります。

② 保健所の基準まわり(手洗い・シンク・区画)

保健所の施設基準は2021年(令和3年6月1日)に全国で標準化されました。居抜きでも、現行基準に合っているかで改修の要否が決まります。詳細は施設基準のページと地続きです。

「2槽シンク義務」は誤解
古い解説サイトの「シンクは2槽必須」は現行法の記載ではありません。現行の基準に槽数の明記はなく、「使用目的に応じた数」(食材用と器具用を分ける、という原則の帰結)とされています。動線と用途で必要数を判断します。

あわせて、手洗い設備の位置と数(再汚染防止構造の水栓で)、汚染/非汚染の区画(間仕切りを全面に立てなくても、腰壁やエリア分けで可)、清掃用具の保管場所と作業内容の掲示(新設された義務)を確認します。喫茶店営業を含む簡易な営業では、床壁・排水・冷蔵設備の基準が緩和されうる特例もあります。

③ 契約・お金の落とし穴(造作譲渡・原状回復・リース)

「居抜き=安い」は退去時に逆転しうる
契約に原状回復(スケルトンに戻す)義務があると、居抜きで入っても退去時に造作の撤去費用(数百万円規模になることも)がかかります。契約書で原状回復の範囲を必ず確認してください。「そのまま次に引き継げる(居抜きで退去できる)」かどうかで、出口のコストが大きく変わります。

造作譲渡(前テナントの内装・設備を買い取る)では、①譲渡対象リスト(何が付いてくるのか)を書面で、②所有権(貸主のものか前テナントのものか)を、③厨房機器・製氷機・レジ等にリース残債がないかを確認します。リース品は譲渡も引き継ぎもできず、撤去されてしまうことがあります。初期費用は、賃料以外に保証金(敷金)・礼金・造作譲渡料がかかる点も押さえます。

④ 建築・消防・許可(検査済証・用途変更・消防)

検査済証があるか(無いと増改築や大規模な内装工事でつまずきます。紛失なら台帳記載事項証明、そもそも無い場合は平成26年の国交省ガイドラインに基づく調査――詳細は用途変更の実務判断へ)。用途変更は、前が飲食店以外からの転用で変更部分が200㎡を超えるなら確認申請が必要です。消防は、用途・規模が変わると防火対象物の区分が変わり、自動火災報知設備・誘導灯・スプリンクラー等が遡及することがあります。確認申請の要否とは別に、管轄の消防署へ相談します。最後に、その物件・図面で営業許可が下りるかを保健所へ事前相談しておくと安全です。

契約のハンコ前の順序

居抜き・スケルトンを問わず、失敗しない順番はこうです。

1. 物件が飲食店を開ける場所か(用途地域チェックマップ)と、用途変更の要否(用途変更の実務判断
2. 保健所に事前相談(施設基準に合う図面か)
3. 設備を実測(水・電気・ガス・ダクトの容量、グリストラップ、水栓)
4. 消防に相談(防火対象物・消防用設備)
5. 契約書で造作譲渡の対象・所有権・リース残債・原状回復の範囲を確認
6. 工事+造作+退去(原状回復)まで含めて見積り
以上を契約のハンコより前に。ここを飛ばすと取り返しがつきません。

よくある判断

Q. 居抜きなら前の厨房設備はそのまま使えますか?
A. 「そのまま」は保証されません。前が飲食店でも、手洗いの水栓が回転ハンドル式だと施設基準(再汚染防止構造)で不可、グリストラップの容量・区画・手洗いが現行基準(2021年に全国標準化)に合わなければ改修が必要です。給排水・電気・ガス・ダクトが業態に足りるかも実測で確認します。

Q. 居抜きは初期費用が安いと聞きますが?
A. 内装・設備の初期費用は抑えられることが多い一方、造作譲渡料がかかり、退去時に原状回復(スケルトン戻し)義務があると撤去費用が大きくなります。契約書で原状回復の範囲と、厨房機器のリース残債を必ず確認してください。

Q. 前も飲食店でした。用途変更や検査済証は関係ない?
A. 用途が同じ飲食店なら用途変更(確認申請)は不要です。ただし増改築や大きな内装工事では検査済証の有無が効きます。前が飲食店以外からの転用で変更部分が200㎡超なら確認申請が必要です(→用途変更の実務判断)。

出典・作成方針
保健所の施設基準は食品衛生法・同施行規則第66条の7および別表(令和3年6月1日に全国で標準化)、用途変更・検査済証は建築基準法および国土交通省のガイドライン(検査済証のない建築物、平成26年7月)にもとづきます。設備・造作譲渡・原状回復など契約まわりは一般的な商慣行にもとづく一般情報です。個別の可否は、管轄の保健所・特定行政庁・消防署、契約条件は貸主/管理会社や専門家に必ずご確認ください。誤りにお気づきの場合はお問い合わせよりご連絡いただけると幸いです。

最終更新:2026年7月8日

あわせて使う

📚 資料室:実務リファレンスの一覧(ブックマーク用)。

用途変更の実務判断:前が飲食店以外なら、確認申請が要るか・検査済証の扱いを判定。
保健所の施設基準:手洗い・シンク・区画の現行基準を音声+図解で。
🗺 開業チェックマップ(全国47都市):候補地の用途地域・災害リスク・窓口を地図で確認。
📊 飲食店営業許可の申請手数料 早見表:47都道府県の申請手数料を一覧で。