用途変更の実務判断
飲食店への転用で確認申請は要る?

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事務所・住宅・物販店舗などを飲食店に変えて開くとき、建築基準法の用途変更(確認申請)が必要になることがあります。要否は3つの条件で決まり、外すと「無確認建築」=違反に。ここでは開業者と不動産・内装のプロが物件を見極めるための判定と落とし穴を、条文の原典で"引ける"形にまとめました。

音声で基礎から知りたい方は講座「用途地域と用途変更」へ。このページはその実務判断の深掘り版です。

まず3点で判定する

確認申請が必要になるのは、次の3つがすべて重なるときだけです。

① 変更後が「特殊建築物」か(別表第一(い)欄)
飲食店は第(四)項の特殊建築物=該当。事務所・戸建住宅はここに当たりません。

② 用途変更する部分の床面積が200㎡超か
延床ではなく「変更する部分」で判定します。2019年6月25日施行の改正で、基準が100㎡超→200㎡超に緩和されました。

③ 変更前後が「類似の用途」でないか(令137条の18)
同じグループ内の変更なら確認申請は不要です。ただし後述のとおり、飲食店はどのグループにも入っていないため、飲食店への転用ではこの免除は基本的に効きません。

→ ①〜③がすべて重なるときだけ確認申請が必要。1つでも外れれば不要です(ただし「不要=何でもOK」ではありません。下の注意を参照)。

転用パターン別・確認申請の要否

確認申請が必要  不要 確認申請は不要(※建築基準法・消防法への適合は別途必要)

※特記のない行は「変更部分が200㎡超」を前提。200㎡以下なら確認申請は不要(遡及・消防は別)。

転用パターン確認申請ポイント(原典)
事務所 → 飲食店事務所は非特殊→飲食店(特殊)化。200㎡超で要(法87条→法6条1項一号)。200㎡以下なら不要。
住宅(戸建・共同)→ 飲食店同上。空き家・古民家の転用で最頻出。200㎡以下なら確認申請は不要(遡及・消防は別)。
物販店舗 → 飲食店物販(令137条の18・第八号)と飲食店は"類似"ではない=免除なし。200㎡超で要。
倉庫 → 飲食店倉庫も特殊建築物。飲食店化+200㎡超で要。既存不適格の遡及に注意。
飲食店 → 飲食店(居抜き・業態違いも)不要用途は同じ「飲食店」=用途変更に当たらない。※施設基準・消防・内装制限は別途確認。
変更部分が200㎡以下(用途を問わず)不要特殊建築物でも200㎡以下は確認申請不要。ただし避難・排煙等の規定や消防は別。
飲食店 → 事務所不要変更後が非特殊建築物のため不要(消防・貸主承認等は別途)。
飲食店 → 料理店(接待あり・風営)要(要協議)「料理店」(令137条の18・第十号)は飲食店と別区分。接待を伴う業態は風営法も別途。行政で判断差あり、事前協議を。

「確認申請が不要」でも見落とせない5点

① 不要でも建築基準法は適用される(既存不適格の遡及)
用途変更で準用される避難・排煙・採光・竪穴区画などは、現行法に適合させる必要があります。用途規制(法48条)も原則さかのぼって適用されます(令137条の19第2項の範囲は除く)。例:3階に客席を設けると直通階段が2つ必要になる、など。「申請が要らない=工事だけで開ける」ではありません。
② 消防は別ルート
用途変更で防火対象物の区分が変わると、消防法の届出や消防用設備(自動火災報知設備・誘導灯・スプリンクラー等)の遡及が生じることがあります。確認申請の要否とは切り離して、必ず管轄の消防署に確認してください。
③ 「料理店」と「飲食店」は別/物販⇔飲食は"類似"ではない
確認申請が不要になる「類似の用途」は令137条の18の11グループで、一般の飲食店(食堂・カフェ・レストラン・居酒屋)はどのグループにも入っていません。物販店舗→飲食店、飲食店→バー等は用途変更に当たります。接待を伴う「料理店」は風営法上の別区分です。(古い解説が挙げる「令137条の17」は2019年改正前の番号。現行は137条の18です。)
④ 完了検査ではなく「工事完了届」
用途変更に完了検査はありません。確認申請をした場合は、工事完了後に特定行政庁へ工事完了届を出します(法87条で、法7条の「検査を申請」を「届け出」に読み替え)。図面どおりに施工されたかは自分で確認することになるため、施工管理は要注意です。
⑤ 無確認は、あとで効く
無確認で用途変更すると建築基準法違反(無確認建築)。特定行政庁の是正命令の対象になり、悪質な場合や命令違反には重い罰則(法98条:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は1億円以下 等)。罰則より先に、売却・融資・保険・テナント契約で不利になるのが実務上の痛手です。

居抜き・中古物件は「検査済証」を先に確認

用途変更や増改築の確認申請では、その建物がもともと適法であることの確認が前提になります。検査済証の有無で、進め方と難易度が大きく変わります。

状況進め方
検査済証あり法適合の出発点がそろっている。比較的スムーズに進む。
紛失しただけ特定行政庁の台帳記載事項証明で代替できることがある。
そもそも無い平成26年7月の国交省ガイドライン(指定確認検査機関を活用した「建築基準法適合状況調査」)に基づき、現況が法に適合するかを調査して手続きにつなぐ。時間・費用がかかるため物件選定時に必ずチェック。
居抜きの落とし穴
同じ居抜きでも、前が飲食店か検査済証・確認図面がそろうかで難易度が激変します。前が飲食店なら用途変更は不要ですが、検査済証が無ければ増改築や大きな内装工事の段でつまずくことも。契約前に確認しておくのが安全です。

よくある判断

Q. 事務所を借りて飲食店にします。用途変更は要りますか?
A. 事務所は特殊建築物ではないため、飲食店(特殊建築物)へ変えると、用途変更する部分が200㎡を超える場合は確認申請が必要です。200㎡以下なら確認申請は不要ですが、避難・排煙などの規定や消防の手続きは別途かかります。

Q. 前も飲食店だった居抜きです。用途変更は?
A. 用途が同じ「飲食店」なら用途変更に当たらず、確認申請は不要です。ただし保健所の施設基準・消防・内装制限は別に確認が必要で、検査済証や図面がそろうかで工事の難易度が変わります。

Q. 物販店舗を飲食店にします。「類似の用途」で免除されますか?
A. 免除されません。類似の用途は令137条の18で定義されますが、そのグループに一般の飲食店は含まれず、物販店舗と飲食店は類似の用途になりません。200㎡を超える場合は確認申請が必要です。

Q. 「2槽シンク義務」のように、用途変更にも決まった数値ルールはありますか?
A. 用途変更の要否は「特殊建築物か」「200㎡超か」「類似の用途か」の3点で決まり、金額や"槽数"のような固定値ではありません。なお類似の用途は現行では令第137条の18に定義され、古い解説の令137条の17は2019年改正前の番号です。

出典・作成方針
判断は建築基準法第87条・第6条第1項一号・別表第一、建築基準法施行令第137条の18・第137条の19、および国土交通省のガイドライン(検査済証のない建築物、平成26年7月)にもとづき、e-Gov法令検索・特定行政庁の運用資料で確認しています。まとめ記事・ブログの記述は採用していません。実際の可否は、管轄の特定行政庁・建築主事、消防署・保健所で必ずご確認ください。掲載内容の誤りにお気づきの場合はお問い合わせよりご連絡いただけると幸いです。

最終更新:2026年7月7日

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